【クロストーク】ぺーパリー x 100percent
紙でできた「インテリア雑貨」として種類も豊富な「Kamiterior」ブランドを展開しているぺーパリーの吉澤さん。いろんな素材に眠る可能性に目をつけて、斬新なプロダクトを発表し続けている100percentの坪井さん。お互い初めましての間柄ながら、モノづくりにかける思いやFRATに期待するものを存分に語っていただきました。(聞き手~ハイモジモジ松岡)
【プロフィール】
吉澤光彦 東京都出身。立教大学卒業後、老舗宝飾会社に入社。その後、家業の紙製品製造会社に転職。紙の魅力にはまり、深く携わりたいと思い、自ら起業してペーパリー株式会社を設立。2010年kamiteriorブランドを立ち上げ、現在に至る。第一回OMOTENASHI selection金賞他、商品のデザインやコンセプトにおいて多数受賞。
坪井信邦 1977年生まれ。2006年に株式会社100percentを立ち上げて、「違いを生み出し届ける」という企業理念のもと自社ブランドや直営店、ドイツ、台湾のグループ会社を営している。曹洞宗の寺院に生まれたことから僧侶もたまにしている。米国公認会計士。
Kamiteriorって、どんなブランド?
ぺーパリー 吉澤
ぺーパリー株式会社です。2011年の東日本大震災の時ぐらいからカミテリア事業を始めました。それまでは企画デザインの会社で紙製品を企画したりして、取引先はブランド会社が多かったんです。でも震災の時、自粛したじゃないですか。何もできなくなっちゃって、じゃあその間に「自分たちでやろう」ってことで。
ええ。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
自分たちができることと言えば、紙。紙モノで実用性のあるもの、「用の美」をやろうかなって。最初、紙を蝶の形に抜いて貼れたら面白いと思って抜いてみて、「丸めると立体になるよね」って発想になって。なにか挟み込んで立体になったら中が見えなくていいじゃん、みたいな感じになって、看板商品「ku・ru・ru」が生まれました。
ぺーパリー 吉澤
ある時、テレビの企画で「第一回紅白文具合戦」というのがあって、取材に行っていいですかって電話がかかってきたんです。取材を受けてみたら、大手メーカーさんも入っている中で紅組のオオトリだったんです。放送後にネットで反響があって、1日40~50個ぐらい出荷してました。注文が減らない。
ここから出荷していたんですか。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そうなんです、ヤマトさんに毎日2回くらい集荷に来てもらってました。震災の翌年かな。それで、やる気になっちゃったんです。
たくさん種類ありますもんね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
様子見で作ってみて、売れなかったらやめようっていう、せこい考え方で。怪我しない程度の、原価を割り出せる感じの数量を作って。
でもここは残っているものは、やっぱり売れるから継続していこうってなったものたちですよね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そうです、廃番はまだないんです。パッと散るのは嫌だから、当初は量販店に卸さなかったんです。だから美術館のミュージアムショップを中心に置いてもらっていて。
イメージもいいですしね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ブランディングでもありましたね。主要な美術館に入れてもらって一巡しました。
この「OMOTENASHI selection」って、東京オリンピックが関係しているんですか。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そうなんです、2015年度が第1回目で、東京オリンピックに向けて日本のいいものを海外に発信していくってことで始まって。衣食住の「住」の部門で金賞をもらって、授賞式はホテルオークラでやりましたね。
100percentって、どんなブランド?
株式会社100percentです。初めは弟と始めたんです、この会社。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そうなんですか。
3歳年下の弟がいまして、彼が多摩美で、環境デザインというか、プロダクションとグラフィックの両方をかじった学科を出ているんですね。それで大学在学中に考えたアイデアを商品として作ってくれないかとかと言われて。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ええ。
僕は当時、アメリカで働いていたんです。アメリカで働くために公認会計士になって、会計事務所で働いたり、シリコンバレーで半導体関係の会社にいたりして。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
知識階級じゃないですか。
アメリカで働くためには何が必要かと考えて、会計の勉強をして資格を取れば入りやすいかなと。でもシリコンバレーに4年もいると、だんだん自分の会社を持ちたくなる気持ちが芽生えてきたんですね。当時28歳だったんですけれど。そこへ弟が話を持ち掛けてきたので「じゃあ分かった」と資本を出して、一緒に会社を始めたんです。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
カッコイイね、シリコンバレーで。
そんな感じで始まったんですけれど、日本で働いたこともなかったし、雑貨業界とかインテリアショップも知らなかった。モノ1個作るだけでもお金って結構かかっちゃうし、資本金もすぐになくなっちゃうんですけど、なんだかんだで最初に3~4アイテム作れて、ロンドンの展示会で発表したのが最初ですね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
社名もカッコイイですよね。
アメリカで働いていたこともあり、もともと海外志向は強かったので、世界共通である数字だったりインパクトってところを大事にして。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ええ。
デビューした当時は「デザイン」って言葉が脚光を浴びていた時代で、主だったところと取り引きが始められた状況があって。商品数が少ししかないのに口座を開けてくれるお店があって、そこに助けられましたね。ロットも当時12個とかで、しかも掛け率も高かったんですけれど。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
でも買ってくれた?
買ってくれました。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
いい商品だからですね。
そういうことから始まって、おかげ様でメディアとかでもいろいろ取り上げられて、テレビにも出させてもらったりして。うちの場合、商品がお客さんやメディアを連れてきてくれたり、海外の引き合いを連れてきてくれたりするんです。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
それ、理想ですよ。やっぱり一番の営業マンは商品だって、私も思っているんです。いい商品はいい人を呼ぶから。
FRATイチ押しの商品
手の上でポンポンすると元に戻る鶴のシリーズ(Peti Peto)がありまして。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
いいですよね。これって形状記憶なんですか?
形状記憶に近いです。プリーツ加工を施して、かなり強い折りで。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そうなんだ。
一番売れているのは鶴なんですけれど、本当にポンポンってすると元に戻るんです。マジシャンにも売りましたね。「マジックのネタに使いたいから」って言われて。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
プリーツでこうなるの? 不思議だなあ。
試作を100個近くトライしました。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
眼鏡拭きとか、クリーナーになる?
眼鏡とか液晶を拭くものですね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
いいよね、使い方が。
アイデアでいろいろな可能性が開けるのは、やっていて楽しいですし、やりがいに繋がりますね。
100percent 坪井
――どういう経緯で企画されたんですか?
「デザインを売り込みたい」という友人がいて、初めは別のアイデアだったんです。食事をする時に使う、膝の上に敷くナプキン。ああいうのが折れてたり畳まれてたらいいよねって話になって。でも布ってやっぱり、綿とかじゃ折れないんです。ただポリエステルとかの合繊だったら折れる。セーラー服のスカートがそうなんです。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ああ、あのプリーツか!
だから食卓では見慣れないものだけど、ともすれば毎日みんな目にしているものでもあって。そういうところに盲点というか、可能性ってありますよね。プリーツ屋さんも、まさかお洋服じゃないものでプリーツを使うとは思ってなくて。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ええ。
僕はデザインを勉強したわけでもなく、何かの技術に長けてるわけでもないですけど、常識が分からないから「できません」って言われたことを、素人みたいに「なんでできないんですか?」って思っちゃうんです。でも「頑張ったら意外とできる」ってことを色んな素材で感じてるので、この国のモノづくりの可能性を感じますね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
折り鶴って、日本人は折れるんだけど、外国の人は折れないんだよね。
ええ。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
うちの商品も図面はついてて単純なんだけれど、できない。日本だと「頭の体操になるからいい」っておばあちゃんが言ってくれるんだけどね。
これはでも、やばいですよね、外国人には。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
丸めちゃうと今度、結びたくなるじゃないですか。神社でおみくじを結ぶのが頭にあって、それで、これを考えたの。
おみくじの結び方と同じ結びでできてるのがすごいですよね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そこがミソなの。
大事な部分ですよね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
あ、この北斎の浮世絵のやつは喜ばれますね。丸めて差し込むだけで、簡単だから。
ぺーパリー 吉澤
だから御社の鶴もポンポンするだけで形になる。外国人には(このシンプルさが)大事。
こんなに種類を増やされてるのは理由があるんですか。つまり横展開をすることは、今までのシリーズを諦めていることにはならないのかと。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
全然、諦めてはいないです。日本の流通って激しくて、要するに求められちゃう。新しいものを。
ああ。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
フランス人のバイヤーが「なんで日本ってこんなに(新商品を)いっぱい出すの?」って言うんだけれど、向こうはとにかくオーソドックスなものをずっと長く売る。モデルチェンジなんてしなくていい、いいものはずっと長く生きるって考え方がヨーロッパにはあるみたいで。一方、日本の文具業界は異常なほど(サイクルが)早い。
別に消費者が飽きているわけじゃないんですよね。知らないうちに、もう新しいものができてたりして。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
でも、自分たちが作りたい欲求もあるんです。ただ求められて増やしているんじゃなくて「作りたい」と思ってやってますね。
FRATにはどんな新作を?
僕らは新商品を発表します。いま3つの案件が同時に動いてるんですけど「文具関係に親和性のあるものを」と思ってます。FRATは新しい文房具の業界を作ろうとしている中で、文房具業界というか、何業界か分からないですけれど、そことはちょっとだけズレた僕らがどんな風に映るのか見てみたいなと。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ええ。
今、リブランディングして、大きく2つあったブランドを一つに集約しているんです。FRATを開催するころにはちょうど見せやすいような状況になっているんじゃないかと思うので、新作をプラスして新しい100percentを見せられたらなと。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
素晴らしいですね。
あとK3(ケイキュービック / FRAT実行委員会の中心メンバー)の人たちがみんなナイスガイだったので、例えば僕らと取り引きのあるお客さんを1社でも2社でも連れて来れたらいいなって思ってます。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
うちも動いてるのは2案件。去年、別の展示会で出していたものが、製造が全然上手く行かなくて。満足したものを出したいから改造に改造を重ねてたら、今になっちゃった。
僕らも当日まで上手く行くか分からないし、間に合わなかったっていうオチも結構あるんですけれど(笑)
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
でも出しておかないと。正直言って早いんです、この業界って。
流れが。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
だからとにかく「うちがこういう商品を出すよ」って示しておかないと、すぐに同じようなものを(他社から)出されちゃうから。もし同じようなものを出されたら、うちはもう出さないから。
ああ。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
特に成型物はお金がかかるから、めったやたらにできないじゃないですか。だから試作する前の段階で随分調べたり、コストを計算する。金型を1個作って「失敗しました」じゃ、アウトになるから。その点、紙でできるものは比較的変更が利きますけどね。
僕らは型物ですね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
大変ですよね。
そう言われると、確かにそうかも。でも逆に、僕は紙をやらないんです。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
というと?
僕みたいな紙の素人が、うちのブランドとしてこの素材(紙)をどう活かすかって考えたときに、まだ誰もやってないこと、うちが勝負ができそうな要素がないと(その分野に)行けないんです。それこそ紙の商品はたくさんありますし。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
でも、なんかすごく面白そうなことをやりそうな感じがする。
そんな、全然ですよ。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
(みんなが)ガクンと来るようなことしそう。
ないです、ないです。全然出てこないので、紙に関しては。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
きっとありますよ。だって姿勢がいいですもん、モノづくりに対しての。
FRATにかける思い
絶対にいいお客さんを連れて来たいですね。ただ開催が2日間だから、絶対事前に知らせておかないと。急に「2日だけです」って言われても困るバイヤーさんがいそうじゃないですか。だから「まずFRATを見ておかないと」と思わせられる会になったらいいなと思っています。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そういう魅力ある会にしないとね。
なにか面白いことをやる会だって、絶対に(バイヤーに)言っておこうと思ってます。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ただ漠然と集まってるだけじゃなくて「あの展示会はすごいね」って言われたいですよね。
そこでバイヤーさんに声をかけるとき、一番言えるのは「この日に新作を出します」ってこと。それしかないけど、興味があったら来てくれると思うので。
100percent 坪井
――FRATに期待することはありますか?
ぺーパリー 吉澤
やっぱり出会いですよね。メーカー同士もそうですけれど、こうして坪井さんとお会いして、かなり刺激を受けましたから。違った視点の人がいるというのは、やる気スイッチが入りますよね。お仕事やりたいなってなるし、ワクワク感がある。
僕も出会いに期待ですね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
別の展示会に初めて出たときのワクワク感を思い出すんです。会場に行ったときに「ここでやるのか」みたいな緊張感があったじゃないですか、下手なものは出せないぞっていう。ああいうのって必要だなと思います。FRATに出る以上はただ単に参加するんじゃなくて、いい意味で目立ってやろうと思ってます、商品として。
僕は「EXTRA PREVIEW」という展示会にキュレーターの立ち位置で関わっていますけど、それだけだと世界が狭くなっちゃう思いもあって。別の視点で自分を見せたい、見られたい。角度がちょっと違うだけで気づくこともあったり、気づかれなかったこともあっただろうし。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
ええ。
僕らの商品は違和感というか異質な部分もあると思うんです、みなさんの商品と。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
いや、逆にむしろ、その方が面白いかもしれないです。だって今のお店って幅広く、ライフスタイルのものを置いてるじゃない。
カテゴリがいろいろ多岐に渡ってますもんね。
100percent 坪井
ぺーパリー 吉澤
そういう意味でFRATは面白いと思います、文具だけって限定するよりも。